愛媛県松山市朝生田町一丁目3番10号
当院の眼科は1999年に常勤医師1名にてスタートし、現在で約20年の歴史を刻んでいます。この間、県内および近隣の眼科医や診療施設より数多くのご紹介を頂く中で、紹介患者数、手術件数とも増加しております。白内障手術はもとより緑内障手術件数は県内有数です。近年は網膜硝子体手術の増加しており、手術成績を踏まえ、地域からの信頼を得ている証しであると考えております。
2021年4月より愛媛大学前学長であった大橋裕一先生をお迎えし、常勤医は4名となりました。看護師、視能訓練士それぞれ4名、2名の医療クラークが診療を補佐する中で、完全予約制のもとでスムーズな外来診療となるよう努力しています。今後とも、患者さまの立場に立った専門医療を提供し、「地域に根ざした眼科診療」をモットーに前進を続ける所存です。
2008年、当院は眼科医療の発展に貢献することを目的に、「視機能再生学講座・南松山病院」を愛媛大学医学部眼科学教室に設置しました。当院の眼科は、この寄付講座のサテライト診療拠点に位置づけられています。大学と連携することで、特定の専門領域については大学より経験豊かな専門医を招聘し、専門性の高い外来診療や手術を定期的に行っています。本年度からは、愛媛大学眼科との連携をより緊密なものとし、アイセンターとしてスタートを切りました。今後、診療体制の幅を広げ、センター機能を高めていく予定です。
2012年 | 261 |
---|---|
2013年 | 285 |
2014年 | 495 |
2015年 | 519 |
2016年 | 562 |
2017年 | 636 |
2018年 | 679 |
2019年 | 700 |
2020年 | 578 |
2021年 | 691 |
(単位:件)
年度 | 白内障 | 緑内障 | 硝子体 | 眼瞼 | その他 |
---|---|---|---|---|---|
2012年 | 415 | 54 | 44 | - | - |
2013年 | 412 | 62 | 49 | - | - |
2014年 | 488 | 87 | 114 | - | - |
2015年 | 598 | 67 | 137 | - | - |
2016年 | 624 | 75 | 157 | - | 23 |
2017年 | 687 | 85 | 188 | - | 32 |
2018年 | 744 | 114 | 178 | - | 38 |
2019年 | 819 | 73 | 211 | 20 | 34 |
2020年 | 859 | 59 | 210 | 40 | 48 |
2021年 | 915 | 165 | 223 | 47 | 37 |
(単位:件)
2014年 | 120 |
---|---|
2015年 | 277 |
2016年 | 314 |
2017年 | 369 |
2018年 | 387 |
2019年 | 430 |
2020年 | 553 |
2021年 | 558 |
(単位:件)
水晶体の濁りを主徴とする最もポピュラーな目の病気です。原因のほとんどは加齢変化ですが、糖尿病や外傷、アトピー性皮膚炎やステロイド薬の使用などでも起こります。白内障が進行すると「ものが見えにくい、かすむ、物がぼやける、まぶしい、ものが二重に見える」などの様々な症状が現れますが、生活上、見え方に不自由を感じるようになれば白内障手術(水晶体再建術)を行います。
所要時間は10~15分程度であり、超音波装置を使用して極めて小さな切開創から水晶体を覆っている袋(水晶体嚢)を残して濁った水晶体を取り除き、残った水晶体嚢に人工の眼内レンズを入れます。希望があれば、日帰り手術の実施も可能なのでご相談ください。
水晶体を支える靱帯(毛様小帯)が非常に弱く、水晶体嚢が残せないような難治な白内障症例がまれにあります。このような目に対して、このような症例に対しては眼内レンズ強膜内固定術を積極的に行っております。
近年、ライフスタイルの多様化、QOL向上の意識の高まりに伴って、白内障手術にも大きな変革が起こりつつあります。
具体的には、従来の単焦点レンズ(1か所のみに焦点が合う)のみならず、多焦点レンズへのニーズが増大し、2焦点のみならず3焦点レンズが登場し、時に挿入される眼内レンズの選択肢が大幅に広がっています。
この流れを受けて、当院でも多焦点眼内レンズ手術に取り組んでいます。どのような近方視の範囲が快適かは個々のケースで異なりますので、それぞれの方に合わせた選択を行う必要があります。
多焦点眼内レンズを使用する白内障手術を受ける場合、当院では選定療養の費用として、通常の診療費とは別に以下の金額をご負担いただきます。
多焦点眼内レンズの種類 | 金額 |
---|---|
アルコン アクリソフ® IQ PanOptix® シングルピース(TFNT00) | 300,000円 |
アルコン アクリソフ® IQ PanOptix® トーリックシングルピース(TFNT30-60) | 320,000円 |
テクニス シナジー™ VB Simplicity(DFR00V) | 300,000円 |
テクニス シナジー™ TVB Simplicity(DFW150/DFW225/DFW300/DFW375) | 330,000円 |
選定療養とは、患者さんご自身が選択して受ける追加的な医療サービスで、その分の費用は全額自己負担となります。令和2年4月より、術後の眼鏡装用率の軽減を目的とした多焦点眼内レンズを使用する白内障手術は、厚生労働省が定める選定療養の対象となりました。
当院は、多焦点眼内レンズの白内障手術を行う医療機関として届出をしています。多焦点眼内レンズの対象となる患者様には診察時に詳細をご説明いたします。
疑問点がありましたら、眼科主治医にご相談ください。
PanOptix® Trifocal(パンオプティクス® トリフォーカル)で、多様な近方作業が快適に行えます。
TECNIS Synergy™(テクニス シナジー™)は海外において「Continuous-Range-of-Vision:連続焦点型」と評されている。
特長:遠方から近方(33㎝程度)まで連続的に焦点(ピント)が合う多焦点眼内レンズ
2焦点、3焦点眼内レンズは、特定の距離にのみ焦点を合わせます。
従来の多焦点IOLでは焦点が合う距離が決まっています。
緑内障とは目に入る光の情報を脳に伝える働きをする「視神経」が障害される病気です。わが国の成人の失明原因の第1位を占めており、40歳以上の20人に1人、70歳以上の10人に1人が緑内障に罹患していると推計されています。
緑内障では、視神経の障害により、ものを見る範囲(視野)が次第に狭くなりますが、中心を外れた部位から徐々に障害が進行するため、自覚症状として現れにくいのが難点です(実際、緑内障と診断された時には視野の欠損が非常に進行している場合があります)。残念ながら、障害された視神経の機能は回復しないため、一旦失われた視野は治療を行っても改善しません。
このように緑内障は私たちの身近にある恐ろしい病気ですが、初期に診断された場合にはほとんど失明に至ることはありません。言い換えれば、如何に緑内障を早期に発見し、早期に治療を行うかが重要であり、40歳を過ぎれば、何事がなくても一度は眼科を受診してみるべきでしょう。特に、近視の強い方、家系に緑内障発症者がいる方は統計学的に緑内障を発症しやすいとされているので注意しましょう。
当院眼科には、豊富な経験を積んだ緑内障の専門医が定期的に外来診療を行っています。ご心配な方は、ご予約の上、一度受診されることをお勧めします。また、自費とはなりますが、「眼科ドッグ」というスクリーニング検査プログラムを完全予約制で実施していますので、お時間に制約のある方はこちらのご利用を是非お勧めします。
網膜とは眼球の奥に存在する膜状の神経組織で、光を感じ取る働きを持っている点で、カメラのフィルムによく例えられます。その中心部には視細胞が集積し、ものを見る上で非常に大切な黄斑(おうはん)と呼ばれる組織がありますが、いろいろな原因で障害が起こります。
他方、硝子体とは眼球の内腔を占める透明なゼリー状の組織で、隣り合わせにある網膜との相互作用によって、「網膜硝子体疾患」と総称される様々な病気が起こります。
目の表面には栄養分として涙が分泌され、角膜や結膜を常に潤しています。ドライアイとは、この涙の量が減少する、あるいはその質が変化することで目の表面が不安定となって様々な症状を呈する疾患です。「目が乾く、目が痛い、重い、疲れやすい、ゴロゴロする、かゆい、かすむ、光がまぶしい、涙が止まらない。」など、これらはすべてドライアイの症状なのです。
テレビ、パソコンによる目の酷使、室内空調による湿度の低下、コンタクトレンズの長時間装用など、現代社会は目を乾燥させる要因に満ちあふれています。その意味で、ドライアイは現代病のひとつとされており、困っている方は全国に800万人以上いると推定されています。
最近よく目が疲れる、何となく目が重いなどの症状はありませんか?ドライアイは膠原病などの全身の病気に合併して発症することもありますので注意が必要です。ドライアイにはその原因に応じた適切な治療法、治療薬があります。ご心配な方は一度当院を受診されてはいかがでしょうか。当院では、定期的に大学から招聘した専門医が外来を行っています。
図に示しますように、マイボーム腺は、瞼の裏側にある脂肪腺組織で、特有な脂肪成分を産生分泌することにより涙の蒸発を抑制しています。マイボーム腺は加齢とともにその働きが低下し、脂肪成分の質が悪くなるとともに分泌量も低下し、結果として、涙の安定性が損なわれるようになります。
これが「マイボーム腺機能不全 meibomian gland dysfunction (MGD)」と呼ばれる異常で、障害が強くなれば、目の乾きや異物感、痛みなどの頑固なドライアイ症状を生じます。マイボーム腺自体の感染や炎症などのため眼表面の所見がさらに悪化することもあります。
MGDの治療としてこれまで一般に行われてきたのが、眼瞼縁の清拭~いわゆるlid hygiene(リッドハイジーン)です。これは毎晩、専用のシャンプー(またはベビーシャンプー)を使って眼瞼縁を洗浄し、その後に眼軟膏を塗布するという一連の処置のことを言います。
手軽であり、毎日行う習慣さえつけば基礎治療として一定の効果が期待できるのですが、手元過ぎて場所が見にくい上に、眼の近くの部分を触らないといけないこともあって、高齢者では長続きしないのが難点でした。
近年、マイボーム腺の働きを改善し、涙液の安定性を回復させる新たなアプローチとして、IPL(intense pulsed light)治療が大きな注目を集めています。
IPL治療は、極短時間で発光させるキセノンライトによるマイルドな光治療であり、酒皶患者への治療に初めて応用されて以来、皮膚科・形成外科領域で広く用いられています。特に、フォトフェイシャル®というモードでは、しみ・そばかすの原因となるメラニン色素に作用し、これを改善するとともに、真皮層にも働きかけてコラーゲンの増生を促し、肌の質感を整える中で様々な肌トラブルを改善します。
右図に示すように、原法では下眼瞼を中心に両側を処置しますが、最近では、上眼瞼にも照射する方法が考案されています。
MGDに対するIPL治療の臨床報告は2015年より増え始め、2019年までに41編を数えています。その中では、まだ数は多くはありませんが、コントロールされた前向き臨床試験もいくつか行われていて、自覚症状スコアの改善および涙液安定性の指標であるBUTの延長が共通した所見として得られています。
図は2015年に実施された Craigらによる臨床試験の成績ですが、患者28例を対象に、片眼にIPL治療を、他眼にプラセボ照射を3回行ってその効果を比較検討したところ、45日目に有意のBUT延長(改善)が認められています。
治療開始から45日目、3回目の治療を受けた後からBUT(涙液破砕時間)が開始時および治療を受けていない眼と比較して有意に改善しています。
そこで、南松山病院では、長年の信頼と定評があるルミナス社製のM22 IPLシステムを導入しました。当院のアイセンターでは、眼科担当医と愛媛大学医学部の角膜専門医と共同で他の施設にはない「科学的」なIPL治療を提供します。
その特色は、前眼部三次元OCT(光干渉断層撮影装置)、赤外線マイボグラフィ、涙液安定性評価システム(非侵襲的涙液破壊時間の測定)、眼表面サーモグラフィなど、他院には類を見ない多様かつ高性能の外眼部診断装置を駆使して病状を分析し、IPL治療の効果を見定めながら、その方に応じた治療方針を定めていくことにあります。
施術は外来通院で行われ、1回の所要時間は、照射とマイボーム腺圧迫処置を併せて、両側で30分程度です。個人差はありますが、照射時にゴムバンドで弾かれたような軽い痛みを感じるほか、眼瞼の圧迫時にも痛みがあります。なお、施術終了当日は、直射日光を浴びるのは避けていただいた方が無難です。
なお、この手技は健康保険では認められていないため、自費診療(1回 4,000円)の扱いとなり、通常3~4回の照射をワンクールとして治療します。
これからの人生をより豊かに送っていく上で、視力の源泉である涙液の質を改善するIPL治療を前向きにご検討されてはいかがでしょうか。ご遠慮なく、担当医にご相談ください。
近視は日本をはじめとするアジア人に多いことが以前から知られています。特に最近は、パソコンやスマートフォンなどの普及による近業負荷の増加にともない、近視発症の低年齢化が進み、低学年から近視を発症する子どもが増加しています。
「近視」とは調節をしない状態で遠くを見たとき、網膜の前にピントが合う屈折状態で、遠くはボケますが近くは逆にはっきりと見えます。近視になる原因は、遠視性のボケによって目の前後方向(眼軸長)が長くなることがほとんどであり、その発症には遺伝因子と環境因子の両者が関与しています。
しかしながら、最近の近視人口の急激な増加については、勉強、読書、テレビ、パソコン、コンピュータゲーム、タブレット端末やスマートフォンなどの近くを見る作業が多い生活様式が深く係わっていると思われます。したがって、近視の発症や進行を予防するために、(1)正しい姿勢で読書や勉強をする。(2)1時間くらい勉強をしたら、10分間くらい目を休ませる。(3)部屋の照明が明るすぎたり暗すぎたりしないように気をつける。などを励行し、目に負担をかけない生活を心がけることが大切です。
近年では、オルソケラトロジーや低濃度アトロピン点眼、遠近両用眼鏡の装用、戸外活動の奨励など、近視進行を抑える可能性のある方策がいくつか生まれつつあります。お子さまの近視が気になっている方は一度受診してみてください。
涙腺から分泌された涙は、眼表面を潤した後、目頭にある涙点から涙小管、涙嚢、鼻涙管を経て鼻腔に排泄されます。涙道通過障害の代表である涙道閉塞症では、涙がうまく排出できないため、目がうるむ感じや涙があふれ出る症状(流涙症)が出現します。
ただ、流涙症があると言っても、そのすべてが涙道閉塞症というわけではありません。「逆まつ毛」による眼表面への刺激、「結膜弛緩症(白目の粘膜が弛んだ状態)」による涙点の閉塞、ある種の抗癌剤の内服などでも「なみだ目」になることがあります。また、涙液の減る病気であるドライアイでも、眼表面の乾燥刺激によって逆になみだ目になることがあります。
なみだ目でお悩みの方は是非一度、当院眼科を受診ください。涙道閉塞の有無は涙道通水試験で簡単に確認できますし、他の原因が明らかになるかも知れません。涙道閉塞症に対しては涙道内視鏡を用いたシリコン製のチューブ挿入術が行われており、良好な成績を収めています。
幼い子供の目の代表的な疾患が斜視と弱視です。斜視とは、物を見ようと片目が正面を向いている時に、もう片目が違う方向を向いてしまっている状態です。子どもの約2%にみられますが、片方の目が外側あるいは内側に向いているので素人目にもすぐに判りますし、写真を見て「目の位置がおかしい」と言うことで発見されたりもします。斜視の原因は遠視(調節性内斜視)、両眼視の異常、眼球を動かす筋肉や神経の病気、視力不良などいろいろありますので、必ず眼科で診察を受けてください。
もう一つの弱視とは、眼鏡やコンタクトレンズなどで矯正しても正常な視力が得られない目のことを言います。
赤ちゃんは、一ヶ月位ではものの形が分かる程度ですが、3歳になると半分以上の子どもが1.0程度見えるようになり、6歳ではおとなと同じ視力になります。ただし、何かの原因でものが見にくい時期があると、視力の発達が止まってしまいます。
問題なのが遠視性不同視弱視です。この場合、遠視の強い方の目を使わないために視力の発達が遅れるのですが、もう片方の目がよく見えるので子供は不自由を感じない、そのために親も気がつかないという悪循環に陥っています。この意味で、三歳児健康診断における視力検査は極めて重要であり、片目の視力が不良な子供がしばしば見つかっています。上記の遠視性不同視弱視の場合でも、早期に発見して適切な処置を受けていただければ視力は必ず正常化します。
大橋 裕一
田坂 嘉孝
篠崎 友治
山口 裕子
白石 敦
教授
愛媛大学
溝上 志朗
准教授
愛媛大学
鎌尾 知行
准教授
愛媛大学
坂根 由梨
講師
愛媛大学
浪口 孝治
助教
愛媛大学
飯森 宏仁
助教
愛媛大学
井上 英紀
助教
愛媛大学